第十五話 

vsカンダタ一味


「だっ!」

戦闘開始早々、敵の機先を制して動いたのはリューゼだった。カンダタ子分の一人に斬りかかり、子分は盾でそれを受け止める。リューゼはそれを見るや否や打撃攻撃に切り替え、肩から鋭くタックルした。思わぬ衝撃に子分Aはよろめき、リューゼはそいつを蹴り飛ばして体勢を崩す。同時、反動を生かしてバックステップした。

「ヒャド!」

建て直しが不可能までに体制の崩れたそいつにシャルナのヒャドが直撃し、続くクエルスのギラも襲い掛かる。とどめとばかりに再び踏み込んだリューゼの剣撃が炸裂――

「――――ッ!?」

する直前、子分Bが切りかかってきた。咄嗟に剣を使って相手の攻撃を受け止めるが、その後ろから子分Cが攻撃を仕掛けてきた。

「リューゼ、伏せてっ!」

すかさずシャルナが援護に入り、イオの爆発を叩き込んだ。リューゼの真上を起爆点としてぶっ放された爆発は、挟撃をかけようとしていた子分二人をバラバラの方角へ吹き飛ばす。リューゼは半回転して立ち上がると、手と足と、全ての力を使って床を思い切り押し蹴った。強力な反作用で、いつもよりも数段強い力で踏み込んだリューゼは、その力を生かして吹き飛ばされた子分Bめがけて肉薄する。子分Bは壁に叩きつけられるとはいかないまでも転倒しており、とてもリューゼに対応できる状況ではなかった。

「ごあっ!?」

その声を放ったのは、どちらだったろうか。リューゼがそいつの顎を蹴り抜いて失神させると同時、親分カンダタが横薙ぎに斧を叩きこんできたのだ。遠心力を利用した一撃が、リューゼの右肩を容赦なく穿つ。リューゼは剣を取り落とし、吹っ飛んで壁に叩きつけられた。そこへ、子分Cが追撃をかける。

「させるかっ!」

そこへ、怒号と閃光が割って入った。その子分の後ろに追いすがったクエルスが、ギラのの呪文を叩き込んだのだ。隣のカンダタは、同時に繰り出されたシャルナのヒャドに攻撃を中断させられている。

「たあっ!」

続いて、シャルナがブーメランを投げつける。子分Cはそれを剣を使って打ち落とすも、若干の時間の隙が出来た。少なくとも、クエルスが間合いに踏み込むまでの間は。

だが、踏み込むまでに立ちふさがった親分カンダタが斧を振り下ろし、クエルスは咄嗟に身を捻って攻撃をかわす。お返しとばかりにギラを打ち込み、続いて剣で強力な一撃。

だが。

「ぬん!」

しかし、カンダタは――みしりと筋肉を膨張させ――たった一撃でギラの閃光をかき消して、剣撃ごとクエルスのことを吹き飛ばした。クエルスは壁に叩きつけられ、酸素を求めて思い切り咳き込む。そこへ、子分Aが追撃をかけた。

「クエルス!」

その動作に、シャルナは半ば悲鳴に近い声を上げて、子分Aへと突貫した。繰り出したナイフは、見事に鎧の関節部分を突き抜ける。最初に立て続けに食らったダメージもあるのだろう、子分Aは呻きを上げて崩れ落ちた。確かな手ごたえを感じたシャルナだったが

「……活きのいい女は、嫌いじゃないな?」

後ろから出てきたカンダタに、いきなり首筋を押さえられた。そのまま強烈な力でねじり上げられ、足が宙に浮かされる。

「シャルナ――ッ!」

それを見たクエルスが、シャルナを助けようと立ち上がる。だがその前に、カンダタが残忍な笑みを浮かべて、シャルナを横に突き出した。その動作に、クエルスの動きが止まる。

突き出された先は、床の無い吹き抜けだったのだ。

「ボロボロの住居と言うやつも、意外と役に立つものだな?」
「くっ、くそっ――!」

ニヤリと笑うカンダタに、クエルスは歯噛みするだけだ。下手に動いてしまったならば、その瞬間にシャルナは下へと落とされるだろう。

「…………」

周囲を見渡す。リューゼ、シャルナの手によって倒された子分AとB、前方には親分であるカンダタと、首を締め上げられているシャルナ。その横には、鉄兜で顔は分からないが、恐らく笑っているであろう子分C――

「グライ!」

――と、突如右方向で爆発が起きた。何も無い空を起点とした黒色の爆発は、カンダタをシャルナごと爆風によって吹き飛ばす。

右方向――つまり、床のほうへと。

「ぐっ……なんだとっ!?」
「まだ、戦いは終わってないんでね。そこの三流下っ端、戦闘のどさくさでとどめを刺すのを忘れてただろ?」

シャルナの咳き込む声が聞こえる中、挑発的な笑みを浮かべて、後方――リューゼが声をかける。確かに、クエルスやシャルナに阻まれて、結局リューゼへのとどめは叶わなかったのだ。

舌打ちする子分Cは、慌ててリューゼのほうへ切りかかるが

「……ちょっと、待ちなさいよ」
「……あ?」

響いた声に――全員の動きは止められた。その声を放つは、この場にいる中での紅一点。怒りを湛えた、シャルナ・ラヴァーレだった。

「さっきはよくも、人を殺しかけてくれたわよねえぇっ!」

怒号と共に、その手に凄まじい魔力が宿る。カンダタが慌てて止めようとするも、遅い。

「終われ――」


「ヒャダルコオォッ!!」


刹那――怒れる少女が放った吹雪が、盗賊と子分を凍りつかせた。

 


決着をみた。

 

 

 

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