後書き


 

というわけで、朝来姉さんとの共同企画、これにて完結となります。読者様の反応も気になるのですが、まずは朝来姉さんに心の底からお礼を言わねばなりません。

 

朝来みきひさ姉さん、本当に本当にありがとうございました!

 

本当にお世話になりました。そして、こんな企画に付き合っていただき、本当にありがとうございました。

事の発端は、相変わらず即興小説トレーニングの感想ラウンジのチャットから始まりました。ノリは非常に軽いもので、「また執筆を考えているならリハビリ感覚でやってみませんー?」程度のもの。ですが、提案している言葉の軽さとは裏腹に、内心すっげー緊張してました。


だって俺が小説の執筆を手がけ始めたの、半分は朝来姉さんの影響だったんだもの(マジ)。


もう半分は後輩のサイト云々ですが、それはともすれ置いといて。


穴がないかは、大分戦々恐々としています。そして実は、執筆結構ギリギリでした。というのも、前半は「帝王の自治領」との共同執筆、後半は何故か「七色の律動」のネタが湧き、五巻六巻を纏めて執筆、しかも完了してしまうというぶっ飛びぶり。それに加えて姉さんの小説を受けてちまちま書き直したりしたものだから、本当に完結したといえるのは公開したその日、つまり八月の三十一日がラストでした。その分納得の行く代物が出来たので公開は全く無いのですが。


……さて。執筆はとても面白かったです。以下、大体の人物の感想。

 


ベルド

こちら側の「螺旋迷宮」「冒険者の一幕」の主人公です。登場人物紹介にあるのはざっくりカットしてしまいますが、良くも悪くも等身大の主人公です。いえ、書いていると我がキャラながら悪役ぶりの目立つこと目立つこと。自分から仕掛けることはないとはいえ、戦が起これば攻め落とした村の財産は盗むし強姦はやる、へらへら笑うし軽口も叩く、人を殺すのに全く躊躇がない……なんでこんな奴主人公にしようかと思ったんでしょうかね俺は。

自由気ままで楽しいんですが。その軽さの裏でめちゃくちゃ愛妻家なのと、最後まで絶対に諦めない性格が彼の魅力であると、ある友人は言ってくれました。ちょっと嬉しい。

 


ヒオリ

天真爛漫で社交的、それでいてべったべたの甘えんぼさんを描いてみたのが、本作のヒロイン・ヒオリです。元々内輪だけだったから到底現実にはいそうにない女の子を書いてみようとしたら、いつの間にやら公開されてしまっていた。一応、甘えん坊になった理由はしっかり書きました。単に都合のいいヒロインは作りたくないんで。

彼女は今回、この企画で大きな変化がありました。まず第一に、貴族に怯える設定が追加されました。これは元々姉さん側が追加したものなのですが、そういえばそうだと思いまして、夜中にヒオリが叩き起こされるシーンを書き足しました。続いて「奴隷の世話役のおじさん」が実は初登場。この企画が始まるまで、そんな存在影も形もありませんでした。なんかそんな感じで、今回の作品ではやや弱いシーンが多かったので、見る人が見れば苛ついたかもしれない。彼女はもう少し強いです。

 

アドル

全員の中で書いていて一番参ったのがこのアドルです。何分、性格がよく掴めない。最初の一話は結構真面目な依頼が来るので真面目モードでも何とかなったのですが、その後が大変でした。とりあえず基本コンセプトは「面白そうなことには首突っ込む」ことと「無駄に場を引っ掻き回す」が基本。やるときは真面目にやるアドルですが、二話で無駄にからかったり……させたのはいいけど、フェイスがアレだったもので大分抑えられてしまった。こっちのアドル随分真面目だよ、大丈夫かな。

 


エド

一方、簡単に話を書いていけたのが、エド。ベルドをもう少し大人にして、もう少し冷静な性格にして、もう少し思慮深くした感じで書きました。と書くと、ベルドが子供ってことかと思われそうですが、ぶっちゃけ奴はあんまり大人じゃありません。で、エドはその分、大人な男性として描いてみました。とはいったものの、書き上げてみたらあんまり大人じゃなかったんですが。ベルドよりは大分ましですけどね。でもって、こいつの戦闘シーンでの活躍がすげえ。近距離は体術、中距離は投擲武器、遠距離は弓って、オールレンジに戦えるんだもの。

 


フェイス

ある意味面白かったのは、彼女です。最初は結構まともな僧侶の女の人的な感じで書いていったのですが、書き直すごとに妄想方向へすっ飛んでいってしまいました。最初のほうは割と真面目な考え方をしていて、最終話ではベルドが無理にアルミラに刃を向けたこととベルドの考え方が理解できず舌戦になるなんてシーンもあったのですが、朝来姉さんに「そこにあるのは『愛』だから喜んで賛成する」とか言われたこともあり、そのシーンはお流れに。最終話とエピローグがセットになっているのはこのためでもあります。

彼女の戦闘シーンは、やっぱり槍を存分に扱わせてみました。詳しくはブログで語っていますが、槍は突くだけでなく、多種多様な使い方が出来る武器でもあります。というわけで、少し見せ場を作ってみました。


ところで、五話でベルドがヒオリにコーヒーを渡したシーンがあります。で、あれ、隣には最初、フェイスがいました。

以下、ボツにしたネタ。

 

ヒオリはベルドのコーヒーカップに目線をやり、半分興味本位で聞いてくる。

「そのコーヒー、誰が淹れたの?」
「ん? ああ、料理係の女の人にな」
「……う〜……」
「俺だけじゃねーから。アドルもエドも淹れてもらってたから。唸るなヒオリ」
「だってベルド、コーヒー好きだから……」
「たまたまだろ。フェイスもいるのに、子供っぽいやきもちやいてるんじゃねえ。お前の分も淹れてもらったけど、これフェイスに渡しちゃうぞ」
「えっ、ええぇっ!?」
「……なんでお前が驚くんだ?」

ヒオリが驚くのならまだ分からなくもないが、何故フェイスが驚くのか。というか、何故そこまで大げさに驚くんだ。聞き返すベルドに、フェイスはだってと告げてみせる。

「今の二人のやり取りが、実は最初から計算されたものでして……」
「……お前にコーヒー渡す流れだってのか? 普通に三つ貰って渡してやればいいだろうが、なんでそんな面倒な手を打つ必要があるんだ」
「そ、それで、わたくしのコーヒーに、睡眠薬とか入ってたりして……」
「なんでだよ」
「で、でもヒオリとベルドのには入ってなくて」
「……お前を襲うってか? ありえねーから安心しろ」
「『これでフェイスは起きないから俺たちで楽しもう』って、わたくしが寝ているその横で大胆なプレイを……」
「お前実はかなり歪んだ性癖持ってるだろ……」


――ぶっ飛びすぎたので、ボツ。というか、ここからヒオリの部屋を修復する流れに持っていくことが出来なかった。

ちなみに、彼女の妄想癖をエドが知らなかったのは想定外でした。そういえばそうだった、見とけよ自分。

 

 

シリィ

ちょっと影が薄かったかなと後悔しているのが彼女です。戦闘シーンでも他の三人ほど見せ場があるわけでもなかったし、通常シーンでもあまり話しに入ってきていませんでした。彼女の数少ない活躍(?)場所は、エドと二人で食事に行った際のじーさんばーさん。あれは書いていて楽しかったです。ああいう話を書いていると展開も単純で頭も疲れません。ベルドとヒオリがじーさんばーさんになるまで生きてたら、フェイスとタッグですごいことになったかもしれない。

……さすがにもうアイドルじゃないか。

 

 

ルミーラ

ジェイブリル家当主にして、暗殺未遂で終わるだけの存在。姉さん側の小説にすると、ヴィクトル・ブリュイエール氏に相当。ですが、出番は比べる間もなく少ない。いえ、アルミラとの感情とか描いても良かったのですが、何故か蛇足感が否めなかったので切っちゃいました。本編中にも、出番はほとんどありません。一応最後の姉さんの問いに答えておくと、後は報酬を払うだけになった冒険者の前で、ごちゃごちゃと家庭内のいざこざを持ってきたくなかったという意味と、これ以上アドルたちに迷惑をかけたくないという意味がありました。しかし、目立たんなー、こいつ……

ところで、ヴィクトル氏は金遣いの荒かった(愚かだった)前領主を倒して出世してますが、実際フランスにブリュイエールという思想家がいて、彼が残した言葉の中に「世の中で出世するのには二つの方法がある。あなたがた自身の勤勉によるか、他人の愚かさによってである」というものがあったりしますが、実は狙ってたりします?

 

 

アルミラ

ジェイブリル家長女にして、暗殺未遂で終わるだけの存在。姉さん側の小説にすると、ナタリー・ブリュイエール嬢に相当。うーん、ナタリーが父親と和解できたのに対し、こちらは悪役のままで終わってしまった。一応彼女なりの行動原理というのはあったのですが。ちなみに、彼女がやたら強かったのは、召還したミルヴェーラの力を借りていたという設定だったのですが、書くところがなくて結局後書きで書いているというこの卑怯。アンブローズ卿に「確かに貴族の娘となれば演舞などをする機会も多いから、それなりに武術は仕込むのだが、まさかそれが現実に通用するとでも思っていたのかどうか」といわれていますが、もともとの彼女の実力はそんな程度でした。

ちなみにルミーラとアルミラのジェイブリル親子は、ラリホーを使ってくるどこぞのウサギが語源です(爆)。ボツにしましたが、最初にいた彼女の弟がミラージでした(何)。

 

 

ジスタル

朝来姉さんの小説を受けて急遽作り上げた、奴隷の世話役の叔父さんです。本名ジスタル・アルマイン、ヒオリに関係する人間なので、語源は宝石のアメジストとアルマンダイン・ガーネットです。ヒオリがロードライト・ガーネットなので、ちょうどいいかなと思いました。というわけで、性格その他は全て朝来姉さんの小説に依存しています。物腰柔らかな優しいおじさんにしてみました。多分、ヒオリが唯一ベルドを忘れて懐いた人間。

 


ルー

冒険者ギルドの事務員で、姉さんの小説本編には導入部で登場している程度。しかし、実際ちょうど良かったので、今回の話にも参入してもらいました。そうなると、必然的に舞台は聖王国。ベルドたちはどこでやっても変わらない上、アドルたちの名前が一番知れているのはここでした。しかし、ベルドとヒオリ、これからどこへ行くんだろう。

 


ラードルフ

姉さんもびっくり、まさかのオルシス城主が登場。実はこれ、適当な貴族に話を聞きに行く予定だったのですが「ん? ちょっと待てよ?」との思考回路により急遽抜擢。折角だし、関係したの出したいじゃん。といっても、こっちは向こうの貴族事情を知らないので今でも出してよかったのかどうか首をかしげているのですが。

人生冒険だ(何)。

 

……とまあ、大体人物はこんな感じです。「ヴァルハラ卿」は実はツァーリ(本名フリードリヒ・ヴァルハラ)です。何しに来たこの男。

人物関係でぼろくそ言ってますが、書いていて本当に楽しかったです。どうぞ、「金」にも出しちゃってください。そしてブログに書かれたとおり、「金」に入った辺りでもう一度やりましょう。世界観がしっかりしていて問題がないのなら、今度こそ「プラスアルファの悲劇」とかをお借りするのもいいかもしれませんね。


ではでは、今回はそんな所で。最後にもう一度お礼を申し上げさせていただき、このお話を締めにさせていただきます。どうも、ありがとうございました。

 

 

 

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